子どもの頃、親に連れられて近所のパチンコ屋へ行ったことがある。
当時の私は、その騒音とタバコ臭の充満した空間にいるのは退屈で、
建物のウラで一人かくれんぼとかしたり、
パチンコ打ってる親の隣に、ジュースを与えられてチョコンと座ったりしてた。
父は昔(今も)、パチンコよりもスロットが好きな人だ。
それでも20年前のスロットといったら、現在のみたいに演出が液晶画面で出たりとか、大当たり中にナビゲーションが出て確実にMAX711枚取れるとか、そういう便利でぬるいものとは違っていた。
リールの挙動とかスベリとか並び目で判断する、それは打ちなれた人とかまさにギャンブルを恐れない人向け(大げさ)のもの。
子どもの眼から見れば、スリーセブンを狙う父の目は真剣そのもの、これを失敗してしまえば私のお父さんはさぞかしガッカリして、私はそのお父さんを励まし、立ち直らせることが出来るんだろうかとか思わせるものだった。
で、いつものように父の隣に座り、床まで届かない短い足をブラブラさせながら見慣れたスロッターの様子を見ておりますと。
「あぁ、やったやった。やっとだよ」
父の打っていたスロット台に目を向けると、なんだか同じ模様が3つ、キレイに並んでいる。
父の安心した声から、恐らくこれは「当たり」を引いたものだろうと思った。
すると父は、
「ほら、お前に打たせてあげるよ。座りなさい」
と言って私を、たった今「当たり」を引いた台に座らせてくれた。
しかし、そうはいっても私はおガキ様。
回るリールのどれを狙えばいいかなんてモチロン知らない。
でもお父さんはおカネをかけてプレイしているから失敗もできない。
「ど・ど・どうしよう。どうすればいい???」
心配そうに見上げていたであろう私に、父はニコニコしてこう言った。
「大丈夫、揃えられるよ」
いつの間にか、周りには人垣ができてた。
どうやらこのパチ屋で父とは顔なじみのおじさんやおばさんだ。
「大丈夫大丈夫。できるって」
みんな口をそろえてこう言うので、
私はドキドキしながらストップボタンを3つ押した……
ジャラジャラジャラジャラーーー♪
なんとも景気良く、コインが払い出し口から出てきた。
私は、ちゃんと絵柄を揃えられたのだ。
「すごいすごい♪」
周りの大人たちが誉めてくれる。
でも今のはまぐれだなー、またやったらハズレだよ。
ジャラジャラジャラジャラ……
ちょ、っまっ、
「私ってすごくない?すごくない??」
連続して「当たり」だった。
コインがでてくるたびに私は「ヤッター!!」と両手を挙げて大喜び、
周りの大人たちは「すごいねすごいね(笑)」と笑顔だった。
「私ってテンサイだよねー♪」
換金を終えて帰る途中、私はずっと上機嫌だった。
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月日が流れて大人になった私は、パチンコやスロットに興味を示さないものの、それらの仕組みやルールは(少しだけ)わかるようになった。
そして、子どもの頃のスロットの「当たり」。
幼かった私が適当にやってもコインがわっさわっさと出てきた、あの「当たり」。
自分はスロットの天才なのではと思い込んでしまった、あの「当たり」。
JACゲーム(バケ)だったことを、ようやく知ったのだった。
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